インバース型のETFという名前を聞いたことがあるでしょうか。
ベンチマークとなるインデックスの逆の値動きをするETFのことですが、
・インバース型のETFは減価するって聞くけど、どういうことなの?
という疑問をお持ちの方も多いと思います。この記事では、インバース型のETFが減価する理由をお伝えしたいと思います。
Contents
【おススメしない理由】インバース型のETFが減価する理由
まずは、「インバース型のETFとは何か」からご説明していきたいと思います。
インバース型ETFとは
インバースは英語で[inverse」と書き「逆の、反対の」という意味があります。一般的なETFは対象となる参照指標(株価などの指数、日経平均やTOPIXなど)と連動するものが多いです。
例えば、参照指標が日経平均の日経平均連動型ETFであれば、日経平均1%が上昇すれば、ETFの価格も1%上昇します、逆に下落すれば、ETFの価格も下落するという仕組みです。
相場は上下に変動するものです。現物株式だけでは、下落時に利益を減らしてしまします。下落時の「リスクヘッジ」や「利益を狙うため」に作られたのが、インバース型ETFです。
インバース型のETFは参照指標の動きに逆行するように作られていますので、参照指標が下落すれば、価格が上昇するようになっています。
以下の表で見ると分かりやすいと思います。
日経平均株価の変動(例) | 日経平均連動型(ブルなど) | 日経平均インバース型 |
1%上昇↑ | 1%上昇↑ | 1%下落↓ |
1%下落↓ | 1%下落↓ | 1%上昇↑ |
インバース型ETFの概要はお分かりいただけたでしょうか。
なお、インバース型ETFには、参照指標の2倍変動するダブルインバース型もあります。参照指標が1%上昇したら、2%下落するというものです。
東証に上場されているインバース型ETFの一覧は以下のとおりです。
- 1569 TOPIXベア上場投信
- 1457 ダイワ上場投信-TOPIXインバース(-1倍)指数
- 1368 ダイワ上場投信-TOPIXダブルインバース(-2倍)指数
- 1573 中国H株ベア上場投信
- 1571 NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信
- 1456 ダイワ上場投信-日経平均インバース・インデックス
- 1357 NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信
- 1360 日経平均ベア2倍上場投信
- 1366 ダイワ上場投信-日経平均ダブルインバース・インデックス
- 1459 楽天ETF-日経ダブルインバース指数連動型
- 1465 ダイワ上場投信-JPX日経400インバース・インデックス
- 1468 JPX日経400ベア上場投信(インバース)
- 1471 NEXT FUNDS JPX日経400インバース・インデックス連動型上場投信
- 1466 ダイワ上場投信-JPX日経400ダブルインバース・インデックス
- 1469 JPX日経400ベア2倍上場投信(ダブルインバース)
- 1472 NEXT FUNDS JPX日経400ダブルインバース・インデックス連動型上場投信
インバース型のETFが減価する理由
インバース型ETFは本当に減価しているのかをまず見てみましょう。
ちょっと見づらいですが、日経平均株価と「1357 NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」の一年間の動きを比較したものです。
1年前を100として、指数化して比較していますが、結果は以下のとおりです。
日経平均:113.04
ダブルインバース:69.17
日経平均が約13%上昇ですから、2倍で下落の▲26%で「74」になっているはずですが、「69.17」と約5%も減価しています。
これはインバース型ETFの商品としての特徴なのです。ではなぜ減価するのでしょうか。
インバース型のETFが減価する理由は主に2つです。順番に説明していきます。
・価格変動による減価
・配当による減価
価格変動による減価
理由の一つ目は、価格変動です。
インバース型のETFは、参照指標の変動率に逆連動するため、ある1日を捉えた場合、参照指数が1%下落すれば、インバース型は1%上昇し、値動きは、ほぼ一致します。
ところが、2営業日以上離れた日との比較の場合、必ずしもその通りにならないということです。
具体的に見てみましょう。日経平均のダブルインバース型ETFだとしましょう。日経平均の変動率に2倍の逆連動になります。
少し極端な例ですが、日経平均が2,000円の上昇、下落を繰り返した場合を示しています。
日経平均株価 | 変動率 | ダブルインバースETF | 変動率 | |
×1日 | 20,000 | – | 10,000 | – |
×2日 | 18,000 | -10.0% | 12,000 | +20.0% |
×3日 | 20,000 | +11.1% | 9,336 | -22.2% |
×4日 | 18,000 | -10.0% | 11,203 | +20.0% |
×5日 | 20,000 | +11.1% | 8,716 | -22.2% |
その日その日は、日経平均の変動率の2倍の逆で連動していますが、5日目をみると、日経平均は1日目の20,000円(つまり変動率は0%)に戻っているのに対し、ダブルインバースは、8,716円と13%も減価してしまっています。
変動率をもとに計算しているため、このように上下動が大きいときは減価が進むというわけです。
日本証券取引所グループのHPにインバース型指標の概要が掲載されています。以下の画像はそちらから引用したものですが、グラフになっているのでわかりやすいと思います。TOPIXのダブルインバースを例に説明しているものです。以下は上記でご説明した上昇・下落を繰り返した場合です。
TOPIXが元の水準に戻ってもダブルインバースは元に戻っていないのがお分かりいただけると思います。
一方で、上昇し続けた場合、下落し続けた場合は、以下のようになります。
<上昇し続けた場合>
<下落し続けた場合>
上昇や、下落が連続する場合は、複利の効果で、上昇幅は大きくなり、下落幅は小さくなります。
これをメリットと考えることはできますが、相場は上昇・下落が何日も続くことはまれです。そのため、上記で記載した上昇・下落を繰り返す場合のように、価格は逓減していく確率が圧倒的に高いです。
配当による減価
インバース型の減価は価格変動だけではありません。配当によっても減価します。
参照する指標は、通常、日経平均先物、TOPIX先物などの先物価格が使われます。先物では、配当の受け取りはありませんが、配当落ちの影響を指数の連続性確保のため調整しています。
そのため、インバース型ETFでは配当落ちの下落分が価格に反映されません。
具体例を見てみましょう。
日経平均 | 日経平均先物 | インバース型ETF | |
×1日 | 20,000 | 19,800(配当落ち200円を調整済) | 10,000 |
×2日(配当落ち) | 19,800 | 19,800 | 10,000(先物が変化していないので変動なし) |
×3日(配当落ち分回復) | 20,000 | 20,000 | 9,900(日経1%上昇なので1%下落) |
日経平均株価は、配当落ち前の水準に戻っただけですが、インバースは減価しています。
この減価は、一年間(半年間)かけて企業が稼ぐ利益の配当相当額が株価には織り込まれているため、その分上昇しますが、配当を受け取れないインバースでは、その分目減りしてしまうということですね。
インバース型ETFの活用方法
ここまでご説明したとおり、インバース型ETFは減価があるため、長期保有には向きません。
とは言え何か活用できないかと考えたのが以下の方法です。
・職業上の理由やその他の何らかの理由で、空売りができない方のヘッジ手段として活用
・インバース型ETFを空売りして、減価を利益に変える
まとめ
いかがでしょうか。
インバース型ETFの減価について、ご説明してきました。
相場は上下に変動するものであることや、配当による減価もあり、インバース型を中長期で持つと負ける確率が高そうだということはお分かりいただけたと思います。
逆に特性を活かして短期的な下げ相場での活用や、空売りなどで利益を上げるといった使い方をすれば、利益を上げることが出来そうですね。
この記事が何かの役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。